2023.10.5
岩見 真吾 教授(名古屋大学大学院、京都大学高等研究院ヒト生物学高等研究拠点(WPI-ASHBi)連携研究者)らの研究グループは、オックスフォード大学との共同研究で、新型コロナウィルス感染によるクラスターの発生確率の計算に世界で初めて成功しました。この画期的な方法により、感染者ごとに異なるウイルス量の時間変化を分析し、抗原検査や抗ウイルス薬剤による治療の個別介入を行うことで、クラスターの発生確率に及ぼす影響を評価することが可能になりました。この手法によれば、抗原検査による感染者スクリーニングは、クラスターの発生確率を大幅に低減する効果がありますが、感染力の強い変異株(例: オミクロン株)によるクラスターを完全に防ぐことは難しいことが明らかになりました。 国内外での感染者数の再増加や新たな変異株の出現が懸念される中、今後の社会活動と感染症対策を両立させるためには、予防的な手段としての定期的な抗原検査やワクチンの追加接種キャンペーンなどの必要性が科学的に示唆されました。クラスター発生のリスクを最小限に抑える必要がある状況下で、本研究の成果は、数理モデルに基づく効果的な感染症対策の確立に向けた重要な一歩となることが期待されます。
本研究成果は、2023年10月2日付国際学術雑誌「Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America」に掲載されました。
詳しい研究成果は こちら
タイトル | Analysis of the risk and pre-emptive control of viral outbreaks accounting for within-host dynamics: SARS-CoV-2 as a case study |
著者 | William S Hart, Hyeongki Park, Yong Dam Jeong, Kwang Su Kim, Raiki Yoshimura, Robin N Thompson, Shingo Iwami |
掲載誌 | Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America | DOI | doi.org/10.1073/pnas.2305451120 |