加藤利佳子

研究者（雨森G）

Position: 助教
Research Field: 神経生理・認知行動

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研究概要

情動による意思決定への影響

日常生活において、情動が強く作用した意思決定には悪い印象がある。なぜなら、情動は理性的な判断の障害になると考えれているからである。しかし、長い進化の過程において、豊かな情動が維持されてきたということは、情動は生存および種の存続にプラスに働いてきたことを示している。私は、生存戦略における負の情動の機能的役割を明らかにすることを目指しており、これまでに行動価値に基づく意思決定の研究を行ってきた。ドーパミンニューロンのコードする報酬誤差により形成される行動価値は、意思決定の因子として、大きな要素を占めている (図1)。しかし、１回１回の行動選択では、行動価値から算出される現時点における最適行動を必ずしも選択するわけではない。これは、単なるエラーではなく、将来利益を単純な報酬誤差以外の情報も用いて算出したためという可能性がある。それらの因子には、新規情報の探索であり、環境に適した異なる戦略に対する気づき（意識）などがある。例えば、怒りは敵との闘争などのように、負の事象へのアプローチを引き起こす。怒りなどの情動による意思決定への介入の責任領域として、前帯状皮質（ACC）、側坐核（NAc）、分界条床核（BNST）などが挙げられているが、特に霊長類における、情動そのものの役割とニューロン活動のパターンは、これから明らかにされていく課題である。

図１：強化学習モデルとニューロン活動による意思決定のデコーディング

略歴

筑波大学大学院医学研究科博士課程修了(2003年)後、College de France(Laboratoire de Physiologie de la Perception et de l’Action) 研究員（2003年〜2005年）、CREST研究員あるいは文部科学省脳科学研究戦略推進プログラム（脳プロ）研究員（生理学研究所、2005年〜2012年）、生理学研究所研究員（2012年〜2016年）、AMED研究員(京都大学大学院医学研究科、2016年〜2020年)を経て、2021年より現職。

論文

Kato, R., Hayashi, T., Onoe, K., Yoshida, M., Tsukada, H., Onoe, H., Isa, T., and Ikeda, T. (2021) The posterior parietal cortex contributes to visuomotor processing for saccades in blindsight macaques. Commn. Biology. (4), 278

Kinoshita, M., Kato, R., Isa, K., Isa., Kobayashi, Kenta, Kobayashi, Kazuto, Onoe, H., and Isa, T. (2019) Dissecting the circuit for blindsight to reveal the critical role of pulvinar and superior colliculus. Nat Commun. 10(1):135.

Takakuwa, N., Kato, R., Redgrave, P and Isa, T. (2017) Emergence of visually-evoked reward expectation signals in dopamine neurons via the superior colliculus in V1 lesioned monkeys. Elife 6. Pii: e24459.

Yoshida, M., Itti, L., Berg, DJ., Ikeda, T., Kato, R., Takaura, K., White, BJ., Munoz, DP., and Isa, T. (2012) Residual attention guidance in blindsight monkeys watching complex natura scenes. Curr. Biol. 22(15): 1429-34.

Kato, R., Takaura, K., Ikeda, T., Yoshida, M., and Isa, T. (2011) Contribution of the retino-tectal pathway to visually guided saccades after lesion of the primary visual cortex in monkeys. Eur. J. Neurosci. 33(11):1952-60.

Yoshida, M., Takakuwa. K., Kato, R., Ikeda, T., and Isa, T. (2008) Striate cortical lesions affect deliberate decision and control of saccade: implication for blindsight. J. Neurosci. 28(42):10517-30.

Kato, R., Grantyn, A., Dalezios, Y., and Moschovakis, AK. (2006). The local loop of the saccadic system closes downstream of the superior colliculus. Neuroscience. 143(1):319-37.

Kato, R., Iwamoto, Y., and Yoshida, K. (2003). Contribution of GABAergic inhibition to the responses of secondary vestibular neurons to head rotation in the rat. Neurosci. Res. 46(4):499-508.