2021.6.11
空間的な感覚を統合し行動するためのソリューション
ASHBi副拠点長/主任研究者の伊佐正 教授らの総説論文「The tectum/superior colliculus as the vertebrate solution for spatial sensory integration and action」が、2021年6月7日に国際学術誌「Current Biology」誌にオンライン掲載されました。
上丘(ほ乳類以外の脊椎動物の場合は視蓋と呼ぶ)は、周囲の空間における出来事を検出する脳の部位です。周囲の出来事は、多くの場合視覚と聴覚を介して検出されますが、脊椎動物の多様な系統においては、電気感覚、赤外線、その他の感覚モダリティを介して感受されることもあります。これらの情報は、周囲の空間や、さまざまな「目立つ」刺激の個体との相対的な位置を示すマップを形成するために使用されます。感覚マップは、最表層に視覚入力、より深い位置に他の感覚、そして最深層に空間的に配列された運動マップというように層状に配置されています。本論文では、視蓋/上丘の構成と固有の機能、および内在する局所回路での情報処理について概説します。また、行動の様々な側面を制御するために、下流の運動回路に直接、あるいは視床を経由して皮質領域に伝達される視蓋/上丘の出力についても説明します。視蓋/上丘は、進化的にはすべての脊椎動物に保存されていますが、それぞれの系統の感覚の特性に合わせて仕立て直され、その役割は哺乳類における大脳皮質の出現に伴って変化してきました。本論文では、現存する脊椎動物の中で最も古いグループに属するヤツメウナギ、ゼブラフィッシュの幼生、げっ歯類、そして霊長類を含む他の脊椎動物における視蓋による情報処理を比較することによって、視蓋/上丘について、脊椎動物の進化を通じて保存された特性と、分岐した特性の両方を概説します。