堤 璃水

堤 璃水

研究者 (永樂G)

Position
特定研究員
Research Field
発生進化学

研究概要

3次元培養における種特異的形態形成の研究

進化の過程で、動物は多様な形態を獲得し、それぞれの種の生態に適応してきた。例えば、ヒトは現存する他の霊長類と比べ脚が長いことが、ヒトに特徴的な直立二足歩行の基盤となり、さらにそれが脳の巨大化を可能にしたと考えられている。このような種特異的な形態は、ゲノムにどのように規定されているのだろうか?

この問いを追求するため、近年比較発生分野では、実験に適用可能な多くのモデル動物種が確立された。さらにシークエンス技術、CRISPR-Cas9システムなどのゲノム編集技術が発達したことで、動物種間の発生様式の違いがうまれる分子・遺伝的メカニズムにアプローチできる可能性が高まってきている。しかし、マウス、ゼブラフィッシュ、ショウジョウバエといった古典的なモデル動物は、その生態的・生理的特徴が生物学実験に非常に適していたためにこれまで広く使われてきたのであって、その他の非古典的モデル動物では、適応可能な実験操作は依然として限定的なのが現状である。しかも、ヒト胚を使った侵襲的な実験は倫理的に許されないことも大きな要因となって、ヒトをはじめとする種特異的な形態形成については、いまだ分かっていないことが多い。

近年爆発的に発展している幹細胞由来のオルガノイドを用いた研究は、これらの問題にも解決策を与え、これまでアプローチの難しかった種の形態の多様性を支える進化・遺伝的メカニズムを解明できる大きな可能性を秘めていると考えられる。実際、三次元培養において、種特異的な形態形成が再現できる例も多く報告されている。例えば、ヒト全能性幹細胞由来の眼杯オルガノイドでは、マウスのそれと比べ発生に長い時間がかかり、直径が大きく、網膜の厚みが厚いことが観察されている。このように、オルガノイドで種特異的な形態形成が再現できれば、ライブイメージングや遺伝改変、薬剤を使った機能解析で、その形態形成のメカニズムを細胞・分子レベルで迫ることが容易になる。さらに、本質的に同様の方法で異なる種由来のオルガノイドを培養して種特異性が再現できるということは、その形態形成の細胞自律性をあぶりだすことができることを意味している。

ASHBiでは、ヒト・マカクやマウス・トビネズミの比較から、四肢の部位・種特異的な骨成長の仕組みを三次元培養で解析する実験系を確立したいと考えている (図1)。 また、眼の大きさの異なる近縁種の眼杯オルガノイドを比較することで、体のサイズに対して眼のサイズがどのように決まっているかという一般的な仕組みを明らかにしたい (図2)。オルガノイドを用いた研究で、「我々はどこから来たのか 我々は何者か 我々はどこへ行くのか」を理解することができれば、と期待している。

堤博士 図1

図1. マウスの肢芽間充織の3次元培養で形成された成長板様構造
マウス胚から作った肥大軟骨を含む、成長可能な軟骨。このような構造体を全能性幹細胞から作ることを目指して研究を進めている。

堤博士 図2

図2. 齧歯類の眼のサイズの違い
ハダカデバネズミ、マウス、トビネズミは、同様の体サイズを持つ齧歯目の動物であるが、ハダカデバネズミはマウスより小さく、トビネズミは大きな眼を持つ

略歴

2015年 京都大学大学院理学研究科、阿形 清和研究室にて、博士(理学)を取得
2016-2019年 カリフォルニア大学サンディエゴ校、Kimberly Cooper研究室にてポスドク研究員
2019年より京都大学ASHBi、永樂 元次研究室にて、特定研究員となり現在に至る

論文

Convergent metatarsal fusion in jerboas and chickens is mediated by similarities and differences in the patterns of osteoblast and osteoclast activities
Gutierrez HL*, Tsutsumi R*, Moore TY, Cooper KL
*Equal contributions
Evolution and Development 2019 Nov Volume 21, Issue6, Pages 320-329

Evolutionary loss of foot muscle during development with characteristics of atrophy and no evidence of cell death
Tran MP, Tsutsumi R, Erberich JM, Chen KD, Flores MD, Cooper KL
Elife 2019 Oct Volume 8, e50645.

Changing While Staying the Same: Preservation of Structural Continuity   During Limb Evolution by Developmental Integration
Tsutsumi R, Tran MP, Cooper KL.
Integrative and Comparative Biology 2017 Dec Volume 57, Issue 6, Pages 1269–1280

Functional joint regeneration is achieved using reintegration mechanism in Xenopus laevis
Tsutsumi R, Yamada S, Agata K.
(First/Co-corresponding author)
Regeneration 2016 Feb Volume 3, Issue 1, Pages 26–38

Epigenetic Modification Maintains Intrinsic Limb-Cell Identity in Xenopus Limb Bud Regeneration Hayashi S, Kawaguchi A, Uchiyama I, Kawasumi-Kita A, Kobayashi T, Nishide H, Tsutsumi R, Tsuru K, Inoue T, Ogino H, Agata K, Tamura K
Developmental Biology 2015 Oct Volume 406, Issue 2, Pages 271–282

Reintegration of the regenerated and the remaining tissues during joint regeneration in the newt Cynops pyrrhogaster
Tsutsumi R, Inoue T, Yamada S, Agata K.
(First/ Co-corresponding author)
Regeneration 2015 Feb Volume 2, Issue 1, Pages 26–36

Lens regenerates by means of similar processes and timeline in adults and larvae of the newt Cynops pyrrhogaster
Inoue T, Inoue R, Tsutsumi R, Tada K, Urata Y, Michibayashi C, Takemura S, Agata K.
Devlopmental Dynamics 2012 Oct Volume 241, Issue 10 Pages 1575–1583

受賞歴

2014-2016 学振特別研究員(DC2→PD) 
2017 Society of Developmental Biology West Coast Reginal Meeting ポスドクポスター賞

研究グループ

永樂グループ
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