研究者 (藤田G)
生命倫理の問題は、生物学と医学における科学技術の進歩から生じます。特に近年、目覚ましく発展を遂げているゲノム編集の技術は、根本的に人間の条件に変容を迫りうる可能性を秘めていることから、すべての人間の生に関連していると言えます。人がこれらの問題にどう対処すべきかと判断するとき、その判断は、科学的成果についてどの程度適切な知識を有しているか、あるいは、どのようなことをそもそも正しいと思っているのかという価値観によって左右されるかもしれません。問題に対する理解度、価値観は人それぞれです。とはいえ、われわれ人類全体にかかわる問題である以上、一部の科学者や哲学者のみに思考をゆだねるわけにはいきません。では、どうすればわれわれはこれらの問題に対して、適切な判断を下すことができるでしょうか。
私はこの問題を理解するうえで、哲学者や専門家としてではなく人間として思考し、他者と言葉を交わし立場を交換することの中で判断することの重要性を説いたハンナ・アーレントの洞察が重要であると考えています。特に誕生すること(natality)や生(ζωή [zoe] / βίος [bios])にという概念に着目しつつ、生命倫理の諸問題をめぐる哲学と政治の関係について研究を進めていきたいと考えています。
2019年京都大学大学総合生存学館博士課程修了。同年4月から一年間、同大学院にて非常勤研究員を務め、2020年4月より現職。
Okui, G. (2018) “The Tension between Philosophy and Politics and the Implication of Sensus Communis in Hannah Arendt”. Studies for practical philosophy. No. 41: pp. 21-52.
Takeda, S., Okui, G., Fujimura, N., Abe H., Ohashi, Y., Oku, Y., . . . Kimura, S. (2018) The Success of the Link Model Programme in Rural Bangladesh: An Empirical Analysis. Journal of Development Policy and Practice. Vol 3, Issue 2.
2020年4月1日