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2024年7月5日発行『Science』(Vol 385, Issue 6704)に研究成果が掲載されました。
2025.05.07
村川教授の研究グループによる研究成果が、2024年7月5日発行の科学誌『Science』(Vol 385, Issue 6704)に掲載されました。
理化学研究所(理研)生命医科学研究センター理研-IFOMがんゲノミクス連携研究チームの小口綾貴子リサーチアソシエイト(京都大学高等研究院ヒト生物学高等研究拠点(WPI-ASHBi)特任研究員)、小松秀一郎客員研究員、村川泰裕チームリーダー(京都大学高等研究院ヒト生物学高等研究拠点(WPI-ASHBi)教授)らの国際共同研究グループは、ヒトの多様なヘルパーT細胞1の遺伝子プロモーターやエンハンサー2を1細胞レベルで調べることに成功し、多様なヘルパーT細胞がさまざまな免疫疾患の発症にどのように関与するのかを系統的に解明しました。
エンハンサーは、遺伝子遠方にあるDNA配列で、細胞種ごとに特異的に標的の遺伝子を活性化します。このエンハンサーに遺伝的変異が生じると、その標的とする遺伝子の“質”ではなく“量”が変化します。それが疾患の発症に関わることが最近の研究で分かってきています。 これまで研究チームは、エンハンサーが活性化した時に、その両端から合成されるエンハンサーRNAに着目し、ヒトのさまざまな細胞・組織でエンハンサー解析を行ってきました。しかし、これまでのRNA解析技術の限界から、1細胞レベルでの解析は十分に行われていませんでした。
本研究では、RNA転写時にその先頭に付加される特異的なシグナルを情報処理により高感度に捉えることにより、1細胞レベルでRNA転写開始点を特定し、プロモーターとエンハンサーの活性を同時に解析できる「1細胞エンハンサー解析法(ReapTEC法)」を開発しました。このReapTEC法を用いて、これまで報告されていなかったヒトのヘルパーT細胞の亜集団を見出し、それぞれの亜集団ごとのエンハンサー活性を調べました。さらに、すでに報告されている自己免疫疾患やアレルギー疾患に関連する遺伝的変異と亜集団ごとのエンハンサー活性を比較解析することにより、免疫疾患に関連した遺伝的変異を持つヘルパーT細胞エンハンサー(疾患エンハンサー)やその標的とする遺伝子を同定することに成功し、疾患に関わる新しい関連分子を同定しました。本研究成果は、自己免疫疾患やアレルギー疾患の新しい治療法の開発に貢献すると期待されます。
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