エムポックス感染の拡大防止へ新たな指標
血中ウイルス量で皮膚病変を予測、治療戦略に貢献
名古屋大学大学院理学研究科(兼:京都大学高等研究院ヒト生物学高等研究拠点 連携研究者)の岩見 真吾 教授等の国際研究グループは、エムポックス感染者における皮膚病変の症状進行に顕著な個人差があることを明らかにしました。また、発症時の血中ウイルス量がこれらの症状進行を予測する指標として有用である可能性を示しました。この成果により、感染初期段階で皮膚病変の今後の進行度を予測することが可能となり、現在流行中のエムポックスに対する治療戦略の改善に寄与することが期待されます。
本研究では、コンゴ民主共和国でエムポックス(クレード)感染者を対象に2007-2011年に集積された大規模な観察研究データを数理モデルにより解析し、病変の数や消失時間が異なる2グループに感染者を層別化できることを示しました。さらに、各患者の血液中のウイルス動態と病変消失時間の関係を分析し、病変発症時の血中ウイルス量がこれら2グループを予測する指標であることを明らかにしました。 臨床的所見や経験則だけではなく、より客観的で定量的な判断基準を提供できるという意味において、本研究は、数理モデルと観察・臨床データに基づいた、世界的に求められている治療ガイドラインの確立にも貢献できると期待されます。
本研究成果は、2025年7月3日午前3時(日本時間)付で国際学術雑誌『Science Translational Medicine』に掲載されました。
書誌情報
Nishiyama, T., Miura, F., Jeong, Y. D., Nakamura, N., Park, H., Ishikane, M., Yamamoto, S., Iwamoto, N., Suzuki, M., Sakurai, A., Aihara, K., Watashi, K., Hart, W. S., Thompson, R. N., Yasutomi, Y., Ohmagari, N., Kingebeni, P. M., Huggins, J. W., Iwami, S., & Pittman, P. R. (2025). Modeling lesion transition dynamics to clinically characterize patients with clade I mpox in the Democratic Republic of the Congo. Science Translational Medicine. https://doi.org/10.1126/scitranslmed.ads4773