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Research

全身で蛍光タンパク質を発現する非ヒト霊長類を非ウイルス性の遺伝子導入手法を用いて作出することに世界で初めて成功

COVID-19のような感染症では、マウスなど小動物ではヒトの病態を再現できない問題があり、非ヒト霊長類における基礎研究の重要性が再認識されています。しかしながら、非ヒト霊長類はマウスなどと比べ、遺伝子改変技術など研究を行うにあたり必要な技術の開発は十分に進んでいません。

国立大学法人滋賀医科大学の築山智之特任准教授(京都大学ヒト生物学高等研究拠点(WPI-ASHBi)霊長類ゲノム工学開発コア長)らの研究グループは、全身で蛍光タンパク質を発現する遺伝子導入トランスジェニック(Tg)動物1を、非ウイルス性の遺伝子導入手法の一つであるpiggyBacトランスポゾン法2を用いて作出することに、非ヒト霊長類において世界で初めて成功しました。本研究により、マウス等の小動物では再現できなかった様々なヒトの疾患の発症機構の解明に係る研究をより強力に推進できると考えられ、今後、複数の遺伝子の同時発現・人為的発現制御等、より高度な設計を必要とする複雑な遺伝子操作が非ヒト霊長類においても可能となることが期待されます。

本研究成果は、2025年3月24日に、国際学術誌「Nature Communications」にオンライン掲載されました。

用語解説

  1. トランスジェニック(Tg)動物:外部から特定の遺伝子を人為的に導入した動物。 ↩︎
  2. piggyBacトランスポゾン法:ガの一種であるイラクサギンウワバに由来するトランスポゾンであるpiggyBacを利用することで、ウイルスを用いずに遺伝子を細胞に導入できる手法の一つ。本手法はウイルスを使った遺伝子導入に比べて技術的に簡単であり、ゲノムDNAに発現させたい遺伝子を恒久的に組み込むことができる。 ↩︎

書誌情報

Nakaya, M., Iwatani, C., Tsukiyama-Fujii, S., Mieda, A., Tarumoto, S., Tsujimura, T., Yamamoto, T., Ichikawa, T., Nakamura, T., Terakado, I., Kawamoto, I., Nakagawa, T., Itagaki, I., Saitou, M., Tsuchiya, H., & Tsukiyama, T. (2025). Non-viral generation of transgenic non-human primates via the piggyBac transposon system. Nature Communications. DOI: 10.1038/s41467-025-57365-w