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哺乳類における生殖細胞の体外培養 試験管内配偶子造成研究(IVG: in vitro gametogenesis)は、体細胞由来のiPS細胞を含む多能性幹細胞(PSCs)を起点として生殖細胞の発生過程を試験管内で再現する。ヒトのIVGを理解するにはさらなる努力が必要であるが、生殖に関する生命科学と医療に新たな可能性を生み出すであろう。ARTはassisted reproductive technologies(生殖補助医療技術)を指す。
Research

総説:哺乳類における生殖細胞の体外培養

ASHBiの斎藤通紀 拠点長/主任研究者/教授らが執筆した総説論文が、2021年10月1日に国際学術誌「Science」でオンライン公開されました。

概要

生殖細胞は、雌雄で形態の異なる配偶子、すなわち卵母細胞と精子に分化し、それらが融合することで新しい個体を形成する。そのため、生殖細胞の発生は、遺伝情報やエピゲノム情報継承に必要な、精緻なゲノム制御機構を有する。この10年間で、多能性幹細胞(PSCs)を起点として生殖細胞の発生過程を試験管内で再現する試験管内配偶子造成研究(IVG: in vitro gametogenesis)が大きく進展した。マウスのPSCsは機能的な卵母細胞と精子に、一方ヒトのPSCsは初期卵母細胞と前精原細胞に誘導することが可能となり、哺乳類の生殖細胞発生機構の解明が進んでいる。適切な機能を持ったヒト配偶子を誘導できる見込みが高まり、そうした発展は、不妊症のモデル化による治療法の探索など、新しい生殖医療の可能性を広げる。しかし、IVG由来の配偶子をヒトの生殖に用いるには、法的・倫理的に慎重な議論が必要である。

論文書誌情報

タイトルMammalian in vitro gametogenesis(哺乳類における生殖細胞の体外培養)
著者Mitinori Saitou, Katsuhiko Hayashi
掲載誌Science
DOIhttps://doi.org/10.1126/science.aaz6830