研究概要

コンセプト

私たちのグループは、たった一つの細胞から、どのように複雑で神秘的な生命を生み出すのか?という、ヒトの初期発生へ興味に基づき、合成生物学、発生工学、そしてオミックス解析などのアプローチを融合させ、研究室で初期胚発生の鍵となるプロセスを再構築しています。

霊長類初期発生機構

私たちヒトの初期発生には、まだ多くの謎が残っています。体外受精技術(IVF)の発達により、着床前の胚発生研究が進みましたが、着床後に起こる体軸の確立、胚葉の形成、組織・器官発生の開始という劇的な変化は、倫理的・技術的な制約から依然として研究が極めて困難です。
私たちAlevグループでは、多能性幹細胞(PSC)を用いたモデルを用いて、重要な発生プロセスを試験管内(in vitro)で再構築し解析しています。これまでに、ヒト分節時計の再現 (Matsuda, Yamanaka et al., Nature, 2020; Matsuda et al., Science, 2020)、ヒト体節形成のin vitro再構築(Yamanaka, Hamidi et al., Nature, 2023)に成功しました。現在は空間的・時間的な特徴を保持し、再現性が高く、大量生成も可能な、自己組織化能を持つヒト胚モデルの構築を行っています。このモデルにより、種特異的な形態形成を司る分子メカニズムを解き明かすことを目指しています。

軸形成・骨格発生と疾患

先天性脊柱側弯や椎体分節異常といった脊椎・体軸疾患の多くは、胚発生初期に起因します。
私たちは、PSC由来の疾患モデルを用いて正常・疾患状態における初期発生を比較し、分子レベルから昨日レベルまで様々な解析を行っています。これらの解析を通じて、初期発生に必須な遺伝的、環境的、エピジェネティックな要因の複雑な相互作用を明らかとし、どのように疾患が引き起こされるのか明らかにするべく研究を進めています。
特に、発生や疾患に関連するゲノム領域やヒト固有のエピジェネティックな特徴を特定し、疾患を引き起こす起源を探ることで、その発症メカニズムを深く理解し、疾患予防や新しい治療介入の戦略開発に繋げることを目指しています。

霊長類の発生と進化

マウスなどのモデル生物では捉えきれないヒト特有の発生メカニズムを理解するため、私たちはヒトおよび非ヒト霊長類のPSCモデルを確立しています。
マルチオミクス解析を用いて、ヒトと非ヒト霊長類の発生を比較し、ヒト固有の生物学的特徴を同定しようとしています。このアプローチは、霊長類の進化だけでなく、特定の発生過程や器官形成への応用が可能です。さらに、このin vitroモデルを様々な哺乳類に応用し、ディッシュ上で比較発生生物学を展開し、種を超えた視点からヒトの進化に迫り、合成進化的発生生物学(synthetic evolutionary developmental biology)という新分野の創出に貢献することを目指します。

生命倫理学者との協働

霊長類胚研究には常に倫理的な議論が伴います。Alevグループでは、生命倫理学者と密接に連携しながら研究を進めています。さらに、国内外の議論に積極的に参加し、この急速に発展する研究分野における倫理的枠組みの策定に積極的に参加しています。