Kyoto University Institute for the
Advanced Study of Human Biology

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山中 良裕

山中 良裕

研究者(Alev G)

Position
研究員
Research Field
発生生物学

研究概要

In vitroにおける体節形成と筋骨格系の発達の再現と比較解析

体節形成は胚の中軸骨格が形成され、パターン化される初期発生において起こるイベントです。この重要な発達プロセスに関する知識は、主にマウス、ニワトリ、ゼブラフィッシュなどのモデル生物に基づいていますが、ヒトの体節形成と分節時計に関する知識は未解明な部分が多いのが現状です。私は初期発生において体節や筋骨格系がとても良く制御された形で、どのように形成されるかに興味があります。私たちは最近、胚発生を模倣した人工多能性幹細胞(iPS細胞)ベースの方法を確立し、未分節中胚葉(presomitic mesoderm: PSM)の段階的な誘導と分化を行い、in vitroでヒトの分節時計の再現に成功しました(Matsuda、Yamanaka et al 、Nature 2020)。私たちは誘導されたPSM細胞が体節中胚葉細胞とその2つの主要な分化先である硬節細胞と皮筋節細胞に分化でき、硬節細胞はさらに骨と軟骨、そして皮筋節細胞は骨格筋と真皮に分化することを証明しました。次に、体節形成を制御すると考えられている分子振動子である、ヒトの分節時計の周期が、ヒトiPS細胞から誘導したPSM細胞で約5時間であることを示しました。また、マウスの分節時計の周期がマウスのEpiSC由来のPSM細胞で2〜3時間であることも示しました。さらに、誘導したヒトのPSM細胞は、体節形成の別の特徴である進行波状の発現動態を示しました。さらにRNAシークエンス解析を行ったところ、マウスとヒトの誘導されたPSM細胞で新規の振動遺伝子を同定しました。その中には両方の種間で進化的に保存されている遺伝子や、種特異的な振動遺伝子が含まれていました。次に、確立したモデルシステムを用いて脊椎の分節異常を特徴とする疾患の解析を行いました。患者由来および疾患様のiPS細胞と、確立したモデルシステムとを組み合わせて、振動、同期、または分化特性の変化を含む、疾患特異的な特徴を同定しました。これらの有望な結果に基づいて、私は現在、Alev Groupで、ヒトおよびヒト以外の生物の体節形成とパターン化に向けたin vitroにおける再現と分析のためのシステムの確立を目指しています。胚発生に着想を得た私たちのin vitroモデルシステムを適用し、分節時計が人やその他の種における体節形成とパターン化のプロセスにどのようにリンクしているかを理解したいと考えています。私の総体的な目的は、体節形成および筋骨格系の発達における種間差異の根底にあるメカニズムを明らかにすることです。

図1: 3次元培養したヒトiPS細胞の免疫染色ZスタックムービーとヒトiPSレポーター細胞のタイムラプスイメージング

略歴

2015年関西学院大学理工学部生命科学科卒業。同年、京都大学医学研究科前期博士課程入学、iPS細胞研究所(CiRA)・戸口田研究室で研究を始める。2017年京都大学医学研究科前期博士課程卒業後、同後期博士課程入学。2019年京都大学高等研究院ヒト生物学高等研究拠点(ASHBi)の立ち上げとともにAlev研究室に加入し現在に至る。

論文

Yann Pretemer, Shunsuke Kawai, Makoto Watanabe, Sanae Nagata, Megumi Nishio, Sakura Tamaki, Cantas Alev, Yoshihiro Yamanaka, Jing-Yi Xue, Zheng Wang, Kenichi Fukiage, Masako Tsukanaka, Tohru Futami, Shiro Ikegawa, Junya Toguchida. Human iPSC-derived hypertrophic chondrocytes reveal a mutation-specific unfolded protein response in chondrodysplasias. Stem Cell Reports. 2021 Mar doi: https://doi.org/10.1016/j.stemcr.2021.01.014

Mitsuhiro Matsuda, Hanako Hayashi, Jordi Garcia-Ojalvo, Kumiko Yoshioka-Kobayashi, Ryoichiro Kageyama, Yoshihiro Yamanaka, Makoto Ikeya, Junya Toguchida, Cantas Alev, Miki Ebisuya. Species-specific oscillation periods of human and mouse segmentation clocks are due to cell autonomous differences in biochemical reaction parameters. Science. 2020 Sep doi: https://doi.org/10.1126/science.aba7668

Mitsuhiro Matsuda*, Yoshihiro Yamanaka*, Maya Uemura, Mitsujiro Osawa, Megumu K. Saito, Ayako Nagahashi, Megumi Nishio, Long Guo, Shiro Ikegawa, Satoko Sakurai, Shunsuke Kihara, Thomas L. Maurissen, Michiko Nakamura, Tomoko Matsumoto, Hiroyuki Yoshitomi, Makoto Ikeya, Noriaki Kawakami, Takuya Yamamoto, Knut Woltjen, Miki Ebisuya, Junya Toguchida, Cantas Alev. Recapitulating the Human Segmentation Clock with Pluripotent Stem Cells. Nature. 2020 Apr;580(7801):124-129. https://doi.org/10.1038/s41586-020-2144-9 *equally contributing co-first author

Yoshihiro Yamanaka., Maya Uemura, Cantas Alev. Stepwise in vitro induction of human somitic mesoderm and its derivatives. Protocol Exchange. 2020 Apr doi: https://doi.org/10.21203/rs.2.22919/v1

受賞

2016年岩垂奨学会奨学生(前期博士課程)
2018年岩垂奨学会奨学生(後期博士課程)



着任日

2020年8月1日

Contact Y. Yamanaka

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