吉岡 久美子

吉岡 久美子

研究者 (Alev G)

Position
日本学術振興会 特別研究員(RPD)
Research Field
発生生物学

研究概要

ライブイメージングを用いた発生時計の解析

胚発生においては、一つの受精卵から細胞分裂、分化、遊走、形態変化など時空間的に制御された種々のプロセスの連続を経て個体の形となります。細胞がこれらのイベントを開始するタイミングや位置をどのように制御しているかは非常に興味深い問題です。私はこのような時空間的に制御された発生プロセスを支えるメカニズム、「発生時計」に関心を持ち、マウスの分節時計を研究してきました。分節時計は脊椎、肋骨など分節構造の元となる体節の周期的な形成を制御する機構で、マウスにおいては、未分節中胚葉 (Presomitic mesoderm: PSM) におけるHes7などの時計遺伝子の周期的な発現振動がその中心的な役割を果たします。Hes7の振動はPSM細胞間で同期しており、この同期は、規則だった分節構造をつくるために重要です。これまでに、私たちはマウス胚のライブイメージングによるHes7の発現動態の定量と、数理モデル、シミュレーションを組み合わせた解析により、Hes7振動の細胞間同期の分子機構を明らかにしました (Yoshioka-Kobayashi et al. Nature (2020))。この研究では、成熟の早いAchillesという新規の黄色蛍光タンパク質を開発し、Hes7との融合タンパクを発現させることにより、Hes7の発現動態をPSM組織において一細胞レベルで可視化できるレポーターマウスを樹立しました (図1)。 これにより、正常な野生型マウスと、同期に異常がある変異マウスのPSMにおけるHes7の発現動態を定量的に比較することが可能になりました (図2)。これ以外にも、多能性幹細胞から誘導した、マウスおよびヒトの分節時計のin vitroモデルの確立にも貢献しました (Matsumiya et al., Development (2018); Diaz-Cuadros et al., Nature (2020))。これらの系では、Hes7の振動をin vitroで再現することに成功しました。in vitroモデルは、時間・コスト・倫理的問題など、胚を使用した実験における制限を受けず、薬剤あるいは遺伝的変異の大規模なスクリーニング等にも適しています。分節時計と体節形成過程の制御機構を理解するために重要な技術は、レポーターを用いた時計遺伝子の動態や形態変化などの定量的観察、そして、分節時計の性質を正確に再現するロバストなin vitroモデルの確立であると考えられます。ASHBiのAlevグループにおいては、このライブイメージングとin vitroモデルを用いながら、ヒトを含む種々の動物の分節時計の機構を解析・比較します。また、分節時計以外の胚発生過程で働く発生時計についても扱っていきたいと考えています。その中で、発生過程における時空間的に制御されるプロセスの設計原理を理解したいと思います。

図1. (動画) 野生型PSM外植片におけるHes7-Achillesの発現. 共焦点顕微鏡を用いた胎生10.5日目マウスPSMのタイムラプスイメージング。Hes7-AchillesレポーターとROSA26-H2B-mCherry (左)、および透過光画像 (右) Yoshioka-Kobayashi et al., Nature (2020)からSpringer Natureにより提供。転載禁止。

図2. (動画) 野生型およびLunatic fringe (Lfng) ノックアウト胚のPSM外植片におけるHes7-Achilles の発現。Hes7-AchillesレポーターとROSA26-H2B-mCherryレポーターを持つ胎生10.5日目野生型 (左)およびLfngノックアウト胚 (右) PSMの共焦点タイムラプスイメージング。Lfngは糖転移酵素をコードし、Delta/Notchシグナル活性を調節する。PSMにおいては、Hes7オシレーションの細胞間位相同期に重要であることが知られている。Yoshioka-Kobayashi et al., Nature (2020)からSpringer Natureにより提供。転載禁止。

略歴

2010年 創価大学工学部生命情報工学科卒業、2012年 同大学院工学研究科生命情報工学専攻博士前期課程修了。2012年–2013年 理化学研究所発生・再生科学総合研究センター 西川伸一 研究室で技術職員として勤務。2013年 京都大学医学研究科医学専攻博士課程入学、ウイルス・再生医科学研究所 影山龍一郎教授の研究室で博士研究を開始。2014年-2016年 日本学術振興会特別研究員DC1として採用、2020年 博士号取得、2020年より京都大学高等研究院ASHBi Alevグループで特任研究員として採用され現在に至る。

論文

Fustin JM, Ye S, Rakers C, Kaneko K, Fukumoto K, Yamano M, Versteven M, Grünewald E, Cargill SJ, Tamai TK, Xu Y, Jabbur ML, Kojima R, Lamberti ML, Yoshioka-Kobayashi K, Whitmore D, Tammam S, Howell PL, Kageyama R, Matsuo T, Stanewsky R, Golombek DA, Johnson CH, Kakeya H, van Ooijen G, Okamura H. Methylation deficiency disrupts biological rhythms from bacteria to humans. Commun Biol. 2020 May; 3(1), 211.

Yoshioka-Kobayashi K, Matsumiya M, Niino Y, Isomura A, Kori H, Miyawaki A, Kageyama R. Coupling delay controls synchronized oscillation in the segmentation clock. Nature. 2020 Apr; 580(7801), 119-123.

Diaz-Cuadros M, Wagner DE, Budjan C, Hubaud A, Tarazona OA, Donelly S, Michaut A, Al Tanoury Z, Yoshioka-Kobayashi K, Niino Y, Kageyama R, Miyawaki A, Touboul J, Pourquié O. In vitro characterization of the human segmentation clock. Nature. 2020 Apr; 580(7801), 113-118.

Takagi A, Isomura A, Yoshioka-Kobayashi K, Kageyama R. Dynamic Delta-like1 expression in presomitic mesoderm cells during somite segmentation. Gene Expression Patterns. 2020 Jan; 35, 119094.

Matsumiya M, Tomita T, Yoshioka-Kobayashi K, Isomura A, Kageyama R. ES cell-derived presomitic mesoderm-like tissues for analysis of synchronized oscillations in the segmentation clock. Development. 2018 Feb 14; 145(4), dev.156836.

Perron A, Nishikawa Y, Iwata J, Shimojo H, Takaya J, Kobayashi K, Imayoshi I, Mbenza NM, Takenoya M, Kageyama R, Kodama Y, Uesugi M. Small-molecule screening yields a compound that inhibits the cancer-associated transcription factor Hes1 via the PHB2 chaperone. J Biol Chem. 2018 May; 93(21), 8285-8294.

Kobayashi K, Ding G, Nishikawa S, Kataoka H. Role of Etv2-positive cells in the remodeling morphogenesis during vascular development. Genes Cells. 2013 Aug; 18(8), 704-721.

受賞歴

13th International student seminar, Outstanding Oral Presentation Award (2015)
22nd East Asia Joint Symposium, Tomy Award Outstanding Young Scientist (2015)
ABISイメージコンテスト2018, 動画部門グランプリ (2018)

研究グループ

Alevグループ
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